みけたろうの本と旅と美術館と。

読書記録、旅行記録、美術展の感想。みけたろうの日記です。

ブダペスト国立工芸美術館名品展で感じたこと

アール・ヌーヴォーのデザイン、世紀末美術がが好きな人にはとってもおすすめな美術展だった。

ブダペスト国立工芸美術館のコレクションのうち、ウィーン万博、パリ万博で購入したコレクション&ハンガリー国内陶磁器製造所からの買い上げ品を中心に展示されているのではないかと思う。つまり1900年近辺の、まさしく世紀末な美術品。

1時間くらいみっちり楽しんだので、まずは新鮮な感想を書いておこうと思ってる。

写真は全て図録から。

 

目次

 

基本情報

panasonic.co.jp

会場:パナソニック汐留ミュージアム

会期:2021/10/9(土)〜12/19(日)

開館時間:開催時間10時~18時(入館は17:30まで)

休館日:水曜日

入館料:一般:1,000円

日時予約が必要なので要注意!(空いていれば予約なしでも入れるようですが)

 

今回の企画展

今回の企画展は「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」なので、アール・ヌーヴォー様式のものをジャポニスムの視点で分類して見せてくれている、と理解。

同時に「ハンガリーは(西洋は)ジャパンはこんな感じだと捉えたよ」というメッセージを楽しむ展覧会なのだと思う。

ジャポニスムという切り口で印象に残ったものと、その展示品から考えたことを書いてみようかなと思ってる。

それにしても写真が掲載できないのが本当に残念だなー。

 

1章 歴史主義からジャポニスム

ジャポニスムの初期段階。

とにかく異国情緒溢れるもの!という勢いで作られたもの、かな。

この中で気に入ったのは3つ。

No.5 ガレの花器(菊花文花器)

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No.5 菊花文花器

他は「ジャポニスムというか中華?」と感じたけど、これは日本だわーと初めて感じたもの。

シャンパンゴールドの地にたなびく霞と艶やかに花開く菊。

屏風絵だと思ったんだよね。3次元なものなのだけど2次元なイメージ。

そして華やかなのだけど、いやらしくない。艶やかだけど落ち着いている。そんな感じを受けた。

菊も日本的だよね。花に詳しくないけど、これはヨーロッパにはない菊では。首のところの菊はペッタリ描いてるけど、胴の部分は菊の花弁がくるりとしているの、あれがめっちゃ日本っぽいわーと思った。

*花はエゾギクなんだって。これは朝鮮半島原産らしいから当時はヨーロッパになかったのかも。

ガレはフランスだから、これがブダペストにあるってことは買ってきたのかな?パリで。

ブダペストの貴族が「今流行りのガレ欲しいなー」とか言ってると百貨店の外商的な人がパリから取り寄せてくれるのかしら。そんなのいるか知らないけど。ここに収まっている由来も知りたい。

*図録によると館長が当時の工房とか工場から直接購入したものらしい。

館長ラディシッチさんの好みが出てたりするのかな。そう思うと楽しいなー。

「ここがいいと思ってねー」とか話してたりしたのかな。

No.6 スツール(滝に花蝶文花器)

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No.6 滝に花蝶文花器

これはなんの布地を模したのかな。振袖にしては派手かなでもなんとなく絞りの着物っぽい感じがする。若くて元気なお姫様が溌剌と着ていそう。

形は中国っぽいかな。でもヨーロッパの石造りの家にこれが置いてあったら映えるだろうな。実際に使うことはないのかもしれないけど、素敵なアトリエに置いて使ってみて欲しい気がする。

 

 No.14 孔雀の浮彫の花器(浮彫孔雀文花器)

f:id:miketarou:20211115214717j:plain台座のところに地紋をみっちり描いているのがジャポニスムなのかな。それとも孔雀をモチーフにしたところかな。

どちらにしろ、暖炉の上に置いたら雰囲気も出るし異国情緒もあるし、すてきな小品。欲しいなと思う。売れそう!

これはジョルナイ陶磁器製造所だからハンガリー地場もの。

なお、ペーチにはジョルナイ美術館があるらしい。Google Mapで見る限りとても良さそう!!(ブダペストからは結構遠いので1泊2日で観光したらいいのかな・・・と早速旅程をたてたくなる)

 

2章 日本工芸を源泉として

説明で一番印象的だったのは「偶然」を愛でるか忌むか。偶然生じた色合いを良しとするか、予定通り完璧な仕上がりを良しとするか。

ここが日本と西洋の違いのひとつ、らしい。

偶然生じたものを良しとして愛でたと思われる・・・ジャポニスム、ということかな。

ここで気に入ったのはこれ。

No.23 まるで藤の花瓶(結晶釉花器)

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No.23 結晶釉花器

藤の花の花器だと思った。既視感ある。

でも、胴の真ん中あたりを見て、あれ?紫陽花?と思った。

結晶釉というものらしい。

*結晶釉 釉薬の中に金属を溶かしきれないギリギリまで入れて焼き、ゆっくり冷やすと結晶が生じるというものだと理解。こういうのは色々チャレンジしないと見つけられないのだろうな。

もちろんある程度計算して作るんだろうけど、どうなるか完璧に予想できなくて、でもそれでできたものがいい、というセンスが好きだ。

これが好きすぎてあとはちょっと記憶が薄い。

 

ただ、ヘレンド製陶所というところが作った、日本の磁器のレプリカは面白かった。

日本の焼き物っぽい色合いなのに、なんだか軽い印象。なんだろう少し色がミルキーというか、肌がぬるっとしてるというか。

このヘレンド製陶所は日本の磁器のレプリカに力を入れていたそう。

当時売れたのかなあ?地味すぎとか暗いとか言われなかったんだろうかと心配しちゃう。

 

3章 アール・ヌーヴォーの精華

ここは ①花 ②表面の輝き ③伝統的な装飾モチーフ ④鳥と動物 に分かれてた。

②表面の輝き ③伝統的な装飾モチーフが・・・素敵!欲しい!というものが多い。

 

花や鳥と動物は、やっぱりヨーロッパ感が強い気がして、あまりジャポニスム感が感じられなかった。②もジャポニスムというよりは異国感(中東?)の方が強い気がするかも。

 

②表面の輝き

東洋の蒔絵や中東のラスター彩のキラキラ、特に金色に魅せられて作った品々、というもの。私も金色大好きなのでここにあるものはみんな好き

 

No.83 ティファニーの化粧セット(植物文容器)

f:id:miketarou:20211115214756j:plainこんなキラキラした容器に入ってたらそりゃ買うよ!気分上がるし。

化粧瓶や香水瓶は気分を上げるために効果絶大だっただろうと思う。今でもそうだし。

 

③伝統的な装飾モチーフ

この文様はとても良い

今回のミュージアムグッズにノートがあったけど、この文様柄だったら絶対買うのに!というものが多数。テキスタイルになり洋服になったら欲しい。

私がミュージアムグッズ制作ならこの文様柄のノートとスカーフ作りたい。あとスマホケース。ブックカバーもいいな。

 

No.94 2つの花瓶(日本趣味文様花器、ハンガリー民芸文様花器)

f:id:miketarou:20211115214742j:plain日本柄とハンガリー柄というだけで嬉しいじゃない!1903年に日本の柄を作ってくれるなんて!

日本の方は秋の趣で、ハンガリーの方は春っぽい花柄。

 

No.96 インカ帝国風な花瓶(天空風景文花器)

f:id:miketarou:20211115214853j:plainクリムトっぽさがあるような気も。

煌めきもあり、うねうねとした植物の生きている感じもあり。

 

No.97 クリムト風花柄花瓶(マーガレット花畑煙帯文花器)

f:id:miketarou:20211115214911j:plain黄金に輝きつつ、それでいてざらりとした質感が艶消しになっていてシックな雰囲気がある。

なのにマーガレット柄がもう可愛いんだよね。

そして漂う世紀末感・・・!最高!

 

No.98 蓋がついているナスっぽい入れ物(洋梨型蓋付容器)

f:id:miketarou:20211115214931j:plain洋梨型なのだけど、色合いからしてナスの漬物のような。ころっとして、手に馴染みそう。深さのある湖のなかで日差しと藻が絡み合っているような色合い。

 

その他のものも文様が今でもそのまま使えちゃいそう。

特にステッキの柄や傘の柄は持ちやすく工夫すれば売れるのでは?欲しいもん。

 

4章 建築の中の装飾陶板

これは、建物として見てみたかったなー!

タイル単体でもいいけど、建物と一体になってた時はどんなだったんだろう。

No.146 ちょっとマジョリカタイル風!(蔦花図フリーズタイル)

f:id:miketarou:20211115214951j:plainここにある展示は基本はビゴ社のものなんだけど、1点だけジョルナイ陶磁器製造所のものがあって目を引いた。

マジョリカタイルっぽい可愛さと、茶色っぽい赤色の渋さで、おそらく当時も目に留まっただろうな。

水に浮かぶ花みたいな。

 

5章 もうひとつのアール・ヌーヴォー ユーゲントシュティー

ユーゲントシュティール、初めて聞いたけどドイツ語というだけで厨二心がくすぐられる。

直角や幾何学的なディティールが特徴、ということだけど、私の印象では流れる優雅な線が印象に残る作品が多かった。確かに今まで見てきた作品とはちょっとだけ印象が異なるのは私でもわかる。

ここで気に入ったのは、これ。

No.147 ちょっと現代的で尖ったデザインの花瓶(樹文花器一対)

f:id:miketarou:20211115215010j:plain余白が格好いい!

この青と白が、そしてペッタリと塗っているのがなんだか現代的な感じがするんだよね。晩秋、空気が冷たくてそろそろ雪が降ってもおかしくない、そんな時期に、東ドイツの共産チックな団地のそばに並んでいる街路樹・・・というイメージ。

 

最後に

日本の(というか東洋の)文化がどう理解され、どう消化され、どう取り入れられたのか、を考えながら見て回るのはとても興味をそそられた。

単純に「あ、ここ日本っぽい」という楽しみ方もできたし。

ハンガリーのジョルナイ陶磁器製造所の作品はおそらく初めて見るものばかりだったので、ハンガリーではこんなのが流行っていたのかな、こういうデザインは売れるのかな、と考えるのも楽しかった。個人的にも欲しいものがたくさん(買えないが)。

ということで、ぜひ見に行ってみてください。楽しめると思います。

あと図録もぜひ購入をお勧めします。これも楽しめます。館内にあった技法解説もここに全部書いてあるー。

この辺りもうちょっと勉強できたらブログに記載してみようと思ってます。

 

ではまたね。